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家庭内LANをIPv6対応にするお話 02 - IPv6のアドレスの種類

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まえがき

以前の記事で、IPv6 もまたIPアドレスを持ち、IPv4 とは表記の仕方が異なるというお話をしました。しかし、IPv6 ではただ表記が変わるだけではなく、IPアドレス自体にも様々な種類が追加されました。

思い返せば、IPv4 の時代はシンプルでした。IPアドレスといえば、世界中でユニーク(単一しかない)であるグローバルIPアドレスと、家庭内LANや企業内のイントラネットなどで使用されるプライベートIPアドレスくらいしか種類がありませんでした。一方 IPv6 ではその目的によって様々なIPアドレスの種類が増えました。

IPv6 におけるIPアドレスの種類

IPv6IPアドレスは、以下の分類の仕方によって区別されます。

  • 動作による区分
  • スコープによる区分
  • 特殊なアドレス

同じIPアドレスでも使用目的によりその呼び方が変わってきます。

動作による区分

以上の3つの区分があります。

ユニキャストアドレスは一つのインターフェイスに割り当てられるアドレスで、1対1の通信に使用されます。通常よく使用されるアドレスです。もし通信機器に複数のインターフェイスが備わっている場合は、それぞれユニキャストアドレスを持ちます。

マルチキャストアドレスは1対1通信ではなく、1対N通信です。マルチキャストアドレス向けにパケットを流すと、そのアドレスに属しているグループすべてにパケットが届きます。IPv4 で存在したブロードキャストアドレスは IPv6 ではマルチキャストアドレスに一種として扱われます。ルータを越えて通信することはできません。

エニーキャストアドレスはマルチキャストアドレスと同じくあるグループを表すアドレスですが、そのグループに属しているノードの内一番近いノード一つのみに送信される。

スコープによる区分

スコープとは直訳すれば適用範囲のことで、IPv6 においてはインターネット空間の中でそのIPアドレスが有効な空間の範囲のことを示しています。種類としては以下の3つがあります。

  • グローバルスコープ
  • リンクローカルスコープ

グローバルスコープは IPv4 にも存在したもので全世界で一意的に決まっていることを示してます。あるグローバルアドレスは世界で一つしかないことが保証されます。

リンクローカルスコープは自身が所属しているネットワークのみで有効なスコープで、ルータを越えて通信はできません。

特殊なアドレス

その他にも、以下の種類のアドレスがあります。

未指定アドレスは以下の形式のアドレスです。

0000:0000:0000:0000:0000:0000:0000:0000 (略記では「::」)

つまりすべて 0 のアドレスで、システムがまだアドレスが割り当てられていない状態を示しています。

ループバックアドレスは通信機器が自分自身を示したアドレスで、 IPv4 では「127.0.0.1」として知られていました。IPv6 では以下の形式になります。

0000:0000:0000:0000:0000:0000:0000:0001 (略記では「::1」)

IPv4 射影アドレスは IPv6 対応ノードが IPv4 しか対応していないノードに対して通信する際に使用されるアドレスです。例として以下のような形式をとります。

例) ::ffff:192.168.1.1

IPv6 アドレスの後に IPv4アドレスが付け加えられていることがわかります。IPv6 環境と IPv4 環境を共存させるために互換性のために存在します。

実際に使用されているアドレス

以上、IPv6IPアドレスには様々な種類があることを示しましたが、これらの概念を組み合わせて IPv6 の運用上では次にあげるような名称がよく使用されます。

  • グローバルユニキャストアドレス
  • リンクローカルユニキャストアドレス
  • ユニークローカルユニキャストアドレス

グローバルユニキャストアドレスはルータを越えてインターネット上で通信可能なアドレス。1対1通信。

リンクローカルユニキャストアドレスはいわゆる ULA と呼称し、IPv6 で導入された新しい概念です。IPv4 でいうところのプライベートアドレスに近いものです。ただし IPv4 では別組織で同じアドレスが使用されることが許されていましたが、ULA の場合はアドレスが重複することはほぼありません。「fe80::/10」のアドレスが使用されます。

ユニークローカルユニキャストアドレスは IPv4 のプライベートIPアドレスの概念に近いもので、IPv4 では APIPA(プライベートアドレス自動設定機能)で 「169.254.x.x」 といった形式のアドレスが自動的に割り当てられることがありましたが、同様の種類のアドレスです。インターネット上では使用できません。「fc00::/7」のアドレスが使用されます。

まとめ

IPv6 では様々な種類のアドレスが存在します。 IPv4 のころに比べれば種類も増え、新しい概念も導入されているのでなかなか理解が難しいところがありますが、IPv6 の環境を整えるためには必須の知識です。これらのことを踏まえ、次回は IPv6 アドレスの実際の割り当て方を解説していきます。